私は、ハラスメント防止研修で、
「親しき中にも礼儀あり」が大切ですよ、と話しています。
あからさまなハラスメントではないけれど、
公私混同したような態度、つまり不機嫌をまき散らしたり、
馴れ馴れしかったり・・・それが思わぬハラスメントと受け取られる場合があるからです。
ある時、ある企業の受講者からこのような質問を受けました。
「親しき中にも礼儀あり、が大事なのはわかりましたが、
親しみと礼儀のバランスをどのように取っていけばいいのでしょうか?」
大変難しいご質問ですね笑
まず、考え方のベースとして
会社は、恋人や友人が集まる場所ではなく、あくまでも働く場所。
価値観の異なる人々が一つの器に入り、
売り上げ・利益・社会貢献を意識しながら、それぞれに自己実現する場所、
ということを、ひとり一人が胸に刻みます。
これがとても大事。
すると、その場における「親しみ」と「礼儀」のあるべき姿が
自ずと描き出されるのではないでしょうか。
親しみと礼儀はバランスの問題ではなく、順番があるのです。
まず親しくなり、その相手に礼儀を尽くす。
・親しくなること
「親しい」という言葉はを辞書で引くと色々書いてありますが、
突き詰めていえば、仲がいいことです。
仲が悪ければ、仕事でも家族でもうまくいきません。
では、仲良くするためにはどうしたらいいのでしょうか?
それは、相手に興味を持って、相手を知ろうとすることです。(他者理解)
また、自らを説明し、わかってもらおうとすることです(自己開示)
この2つの力が作用して、仲良くなっていくものです。
子供のころや学生時代を思い出せば、なんとなくお判りになると思います。
当然職場では、個人的なことを知って、開示する前に
仕事で興味のあること、仕事での得意分野、などから理解・開示していくのは
言うまでもありません。
これを間違うと、ハラスメントになる可能性あり。
・礼儀を尽くすということ
さて、こうしてお互いを知って親しくなったら・・・次は礼儀を意識します。
これは本来「相手へのリスペクトを作法にのっとり表す」という意味ですが、
職場ではリスペクトしている、していないに関わらず、
一定の作法が求められます。
職場は公の場所ですから、
少しくらい機嫌が悪くても、標準的な挨拶ができる、
何かしてもらったら、嬉しくなくてもきちんとお礼を言う、などです。
ですから、「親しいこと」と「礼儀を尽くす」ことは
天秤にかけてバランスをとる、という類のものではなく、
順番を考えて、それぞれを適度な分量で実践するのが良いのです。
繰り返しになりますが、
「会社とは、生産性を挙げてミッションを心に抱き、
VISIONを実現し、社会貢献する場」というのを忘れないこと。
これが大前提です。
これを忘れたとき、親しさが馴れ馴れしさになったり、
礼儀を忘れたりして、様々なハラスメント事案につながることもあります。
そのためには、お互いの強味・弱みをよく知って
(職場の親しさ、というのはこういうことです)
礼儀を尽くす(例えば目と目で分かり合える、というのではなく
きちんと型で示すなど)のが大切、という意味です。
「親しき中にも礼儀あり」というのは、
肉親や恋人より、公の場所にこそ生きることわざかな、と考えています。
ところで、こういう答えのない問いこそ、
社内でディスカッションするのがいいと思います。
私のような講師がいなくても、ちょっと集まって
「親しき中にも礼儀あり」って、どういうことかな?という話を
少人数で話してみること・・・おススメします!

